ドトールは、1杯220円の良質で低価格なコーヒーを武器に、全国で1100店舗以上を展開する日本の代表的なコーヒーチェーンです。そんなドトールは、元々は立ち飲みのコーヒーショップだったのです。
今回は、ドトールが立ち飲みのコーヒーショップとしてオープンした経緯などについて説明させていただきます。
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ドトールが立ち飲みでオープンした理由
1980年4月18日にドトールコーヒーショップは立ち飲みという斬新なスタイルと150円の低価格なコーヒーを武器に誕生しました。
立ち飲みの発想となったのはパリのシャンゼリゼ通りで見た光景にあります。
ドトール創業者鳥羽さんはヨーロッパの視察へ
ドトールは元々はコーヒー豆の焙煎・卸売の会社としてオープンしました。会社が軌道に乗ると、創業者の鳥羽博道さんは、喫茶店をオープンしたいと考えるようになりました。
当時の喫茶店は世間的に不健康で退廃的なイメージが持たれていました。
鳥羽さんは、「いずれ喫茶店が世の中の隅のほう、陽の当たらないところへ追いやられてしまうのは明らか」と考え、日本の喫茶業の未来を憂いていました。その一方で、自分の理想とする喫茶店像を見いだせずに悩んでいました。
そんな折に喫茶業界が初めてヨーロッパを視察をすることになったのです。
「喫茶店先進国に行けば、日本の喫茶業の理想像が見えてくるに違いない。」
というようなことを思った鳥羽さんは、ツアーに参加することを決めました。
他の参加者がホテルで朝食を取っている間。鳥羽さんは、パリの街に繰り出しました。
鳥羽さんは薄型カメラと小型のテープレコーダーを持ち歩き、街の隅々まで目を光らせていました。そこである光景が目に留まります。
地下鉄の駅から出てきたサラリーマンが続々とコーヒーショップに入っていくのです。つられて入ってみると、カウンターに人が群がり、立ってコーヒーを飲んでいました。そして、同じコーヒーを飲んでいても、椅子席とテラス席と立ち飲みでは値段が違うことに気づきました。当時の日本に、このような喫茶店は存在しません。
そのときに鳥羽さんは「そうだ、これだ!この立ち飲みスタイルのコーヒーショップこそ喫茶業の最終形態になるだろう」と思ったそうです。このパリのシャンゼリゼ通りの光景をヒントにした鳥羽さんは、後にドトールコーヒーショップをオープンしたのでした。
オープンした時の反応は?
立ち飲みのコーヒーショップというのは、当時の日本でまったく斬新なスタイルでした。ドトールコーヒーショップ1号店の開店日に、鳥羽さんは期待と不安を胸にいだいていたと言います。
鳥羽さんは第一号のお客様は、会社員か若者と予想していました。
意外なことに最初のお客さんは、年配のご夫婦だったそうです。新しいものをなかなか受け入れられない世代の方が、抵抗なく入ってきてコーヒーを飲んでいたので「よしっ、これでいける」と思ったそうです。
そして店は大繁盛し、翌年には店舗数も4店舗と拡大していきました。
ヨーロッパ視察からオープンまで約10年もの間があった。なぜ?
ヨーロッパ視察旅行からドトール設立まで、9年もの時が流れました。
なぜ、すぐに立ち飲みの店をオープンせずに、そこまで待ったのでしょうか。
当時の状況としては、一杯一杯サイフォンでコーヒーをたてながら提供することに価値を感じていた時代で、街中に至るところでそういう喫茶店がありました。そして、当時の日本は立ってものを飲んだり食べたりするのが行儀が悪いとされていました。
そのような状況でやっても受け入れられないと、鳥羽さんは考えたのでした。
そして、オイルショックによる不景気で、可処分所得の低下という時代の流れと、原宿に店を出したいというオーナーが現れたことが重なり、ここが商機だと思ったそうです。
当時の喫茶店はどこも1杯300円という状況で、給料が減ったサラリーマンが毎日コーヒーを飲むのは厳しいものがありました。そこに、立ち飲みで150円でコーヒーが飲めるドトールの登場は、まさに救世主とも言える存在だったのかもしれません。
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立ち飲みのドトールはまだある
現在も立ち飲みのドトールは存在します。
新宿駅構内にある「ドトール新宿駅構内ルミネ」店です。
慌ただしい駅構内に凛として佇み、その存在感を堂々と示しています。入店するとひとときの癒やしの時間を提供してくれます。日本で最も利用者の多いドトールとも言われています。
座れる席は数席あるものの、ほとんどが立ちの席です。喫煙席もあります。
座って飲むのが当たり前になっているので、立って飲むというのは、ちょっとしたイベントのようにも感じて楽しい気持ちにもなります。
立ってコーヒーを飲みながら窓ガラス越しに映る、忙しなく歩く人々の姿を、ぼんやり眺めていると、なぜか自分が勝者であるかのような気持ちになってくる時があります。
ドトールの歴史を知っていくと「へー、そうなんだー」と好奇心が刺激されてドトールがより楽しい場所に感じるようになると存じます。
立ち飲みのドトールも機会があれば、ぜひとも訪問してみてはいかがでしょうか。
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